おすすめ本

2008年12月21日 (日)

強運の持ち主

著者:瀬尾まいこ
出版:文藝春秋


自分の考えがどうしてもまとまらなくて、どうしようもないとき、
自分の考えの後押しをしてほしいとき、
私は占いに行ってしまいます。
結果が全て当たったかどうかは微妙ですが、
すがりたい!という気持ちで行ってしまいます。

だから、この本の冒頭に描かれている、
主人公の占い師・ルイーズ吉田のイカサマ占いノウハウには、
複雑な気持ちになりました。
元OLの彼女は「これで、三千円。ちょろいものだ。」
なんて言っちゃう姿勢で占い師の仕事をしているのです。

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そんなルイーズ吉田には、
一緒に暮らす通彦という彼がいて、
その彼こそがタイトルである「強運の持ち主」なのです。
でも、付き合いが2年になっても、
彼はずば抜けた才能を発揮するわけでもなく、
ただただ穏やかな生活が過ぎるだけ・・・。


一冊のなかには、ルイーズ吉田の元へやってくる
様々な悩みや事情を抱えたお客さん、
弟子入りを希望する若者、アシスタントの女性、
そして通彦とのストーリーが短編で収められています。
ほんわかしたエピソードのなかで、
ルイーズ吉田がある気づきを得るところが、
瀬尾さんらしい、さりげなさで書かれていて素敵です。


「当たる当たらないは問題じゃなく、
相手が納得する答えを出さないといけない。」
とは、作中の言葉ですが、
なるほど、
受け取る方もそれを期待しているなぁと思いました。
結局は、受け取った結果をどう解釈するか、なんですね。

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この本の装画を担当された、コイヌマユキさんの作風が好きです。
1980年生まれとのことで、同年?!
彼女のプロフィールページはコチラ

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2008年10月27日 (月)

アカペラ

アカペラ
著者:山本文緒
出版:新潮社


‘おかえりなさい、山本さん!’と言いたくなった、
久々の単行本。
ここ6年間はエッセイのみ、
昨年発行の「再婚生活」は、うつ闘病記的な内容だったので、
また作品に触れられたのが嬉しい!

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表題作「アカペラ」をはじめ、
「ソリチュード」、「ネロリ」が収められたこの一冊は、
「孤独」がテーマのように思いました。

境遇であったり、心であったり、捉え方は様々ですが、
寂しさ、虚しさ、社会の煩わしさを抱え、
静かに生きようとする主人公たちの姿が丁寧に描かれています。


「ぐるりのこと。」の橋口監督もそうですが、
心の闇(うつ)を経験された方の心の弱さ、痛みの描き方は
するどく、深く、重いです。
だから、受け取る方はほっとするし、温かさを感じるんですね。


「ネロリ」で印象に残る表現がありました。
『人生がきらきらしないように、明日に期待しないように生きている彼ら』


頑張ることだけが人生の目標じゃない、
不器用でも大きな幸せじゃなくても、
自分なりのペースで生きて、幸せを感じることが大切、
と教えてもらった気がしました。

山本文緒さんの公式ホームページはこちら

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2008年9月 8日 (月)

卵の緒

卵の緒
著:瀬尾まいこ
出版:新潮社


優しい作風で、読後にほんわか幸せ気分になれる
瀬尾さんの作品。
中学校の国語教師をされていた瀬尾さんの言葉の運び方は、
とてもキレイで好きです。

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デビュー作のこの作品では、2つの作品によって
‘家族のつながり’が描かれています。


表題作は、
「お母さんはへその緒を見せてくれない。きっと僕は捨て子なんだ」
と思い悩む小学校4年生の育生が主人公。

たくさんの愛情を注いでくれるパワフルな母に
深い愛を感じつつも、
‘親子をむすぶ確かなもの’が無いことに
不安になってしまう、育生。
そんな彼に、母・君子は、なんと卵の殻を見せて、
「へその緒」だと言い張ります。


子供心の繊細さ、
その出生の秘密を打ち明ける、
お母さんの強さと優しさ。
親子関係の精神的なつながりの強さの大切さを説く、
心にじんわりと染みる素敵な作品です。

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2008年8月16日 (土)

最後の言葉

最後の言葉
著者:重松清 渡辺考
出版:講談社

「戦場に遺された二十四万字の届かなかった手紙」
と題されたこの本は、
NHKで放送されたドキュメンタリー
『最後の言葉 作家・重松清が見つめた戦争』
を書籍化したもの。

重松さんが番組の取材を通して手にした
第二次世界大戦で激戦地に赴いた兵士たちの手紙や日記、
それを数十年ぶりに受け取った遺族との交流が、
重松さんと番組ディレクターの渡辺さんの心情を交えて
書かれています。

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「最後の言葉」、それは、自分の死を覚悟した兵士達が
家族や恋人に遺した言葉。

そこには、感謝や愛、託す希望が綴られていました。
大切な人とずっと共に在ること、
それが叶わない絶望を受け入れた先にある心の優しさに、
とても感動しました。
決して穏やかに迎える死ではないのに、そこには、
「ありがとう」「幸せだった」の言葉が記されていて、
そんな心理状態になるまで、どんなにか辛かっただろう、
悔しかっただろう、無念だったろうと、
切なさで胸がいっぱいになりました。


お盆になると戦争体験を話してくれていた祖父が
亡くなって、今年で8年。
戦地に赴き、死と隣り合わせの日々から帰還した
祖父の深い優しさを、ふと思い出しました。

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この季節、
森山直太朗さんが平和への祈りを込めて作ったという
「夏の終わり」が聞きたくなります。
昨年、コンサートで間近に聞くことが出来たのですが、
心に染みる、素敵な曲です。

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2008年7月25日 (金)

はじめての文学・重松清

はじめての文学~重松清~
著者:重松清
出版:文藝春秋



‘はじめて現代の日本文学にふれる若い読者のために’
とのメッセージが添えられたこのシリーズは、
若い読書に対して、
‘最初の一歩を踏み出すために、良き道しるべとなるように’
と企画されたものです。

村上龍、村上春樹、宮部みゆき、浅田次郎ら著名な作家
が参加したこのシリーズは全12巻。
もちろん私は、重松清さんの一冊を選びました。

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※ブックデザインに私の好きな青が使われているのも嬉しい☆


この一冊に、重松さん自らが選んだ、
少年時代を題材とした短篇8作がおさめられています。


なかでも「モッちん最後の一日」が心に残りました。
両親の離婚によって
望月から山口へと姓が変わることになった少年の、
春休み最後の一日が描かれた作品です。
あだ名である「モッちん」と呼んで欲しいと
友達の家々を巡る少年の姿が、微笑ましくも切ないです。


読後、何とも言えないピュアな気持ちに浸れる素敵な一冊です。
若い世代に向けた企画本ではありますが、
少年・少女時代の感性が戻るようで、大人でも(こそ?)
十分に楽しめると思います。
重松さんが読者にあてた「あとがき」のメッセージも良いです。


文藝春秋「はじめての文学」紹介ページはコチラ

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2008年7月 3日 (木)

流星ワゴン

流星ワゴン

著者:重松清
講談社文庫

私は重松清さんがよく主人公に据える、
「乾いた、疲れた中年」が好きです。

それは、
「生きるって大変だよね。疲れちゃうよね。」と
いう感覚に共感するから。

確かに「生き生きと毎日楽しく暮らす」は理想。
だけど、絶望とか悔しさ、悲しさとか、
マイナスを経験して、黒いモノを内面に抱えるからこそ、
人は強く生きていけるということを
肯定してくれている気がするんです。

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この作品も、
38歳の人生に行き詰まった男性が主人公。

「死んじゃってもいいかなぁ、もう。」
そう思えるほどに生活に人生に疲れ切った彼の前に、
ある晩、
ワゴン車に乗った橋本さん親子が現れます。
この親子は、5年前交通事故で亡くなり、
成仏できずにさまよう魂。

二人とともに過ごすことで主人公は、
長年分かり合えなかった父と心を通わせ、
崩壊した家族が抱える想いを知り、
「サイテーでめちゃくちゃでどうしようもない現実」
をやり直そうとします。

話の軸には、3つの父と息子の関係が据えられていて、
父と息子の距離感やもどかしさが描かれています。


主人公が物語の後半で父親と交わす、
「親子って、なんで同じ歳になれないんだろうね。」
という下りが好きです。

無理やり肩を叩かれるのではなく、
そっと「まぁ、あなたも頑張ろうよ」というメッセージが
受け取れた気がしました。

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2008年6月30日 (月)

ポケットの中の赤ちゃん

ポケットの中の赤ちゃん

作・絵 宇野和子
出版:講談社



小学校中学年くらいの時に読んで、
以来、何十回も読み返している大好きな作品です。
初版が1972年の児童書ですが、数年前に復刊されたようです。
※私の手元にあるのは、
某生命保険会社が出版した文庫本バージョン


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主人公のなつ子(なっちゃん)は、幼稚園児。
きょうだいがいなくて寂しい思いをしている
一人っ子のなっちゃんは、
ある日、ママのポケットから、
ムーちゃんという小さな赤ちゃんを見つけます。

ムーちゃんは、その存在を信じない人に見られると
人形に戻ってしまうので、
なっちゃんは大人に見つからないように、
隠れてムーちゃんのお世話をします。
※私も小学生になるまで一人っ子だったので、
ムーちゃんの存在が嬉しいなっちゃんにとても共感できます

ちょっと勝ち気なムーちゃんは、
紙にクレヨンで描いた食べ物を本物に変える力や、
粘土で作った動物を動かせる力も持っていて、
家の中から続く不思議な世界を冒険したり、
なっちゃんはムーちゃんと一緒に楽しく過ごします。

この一つ一つのエピソードが、子供の目線でワクワクします。
家の中で無くした物は、実はオバケが集めている、
なんていうくだりも。


だけど、ある日、二人に突然のお別れがやってきます。
ムーちゃんが、出会った頃の人形に戻ってしまうのです。
この展開が、ほんとうに、ほんとうに切ない・・・。

やがてなっちゃんには本当の赤ちゃん(弟)ができて、
ムーちゃんと過ごした時間は思い出になります。

子供の頃のキラキラした時間、
柔らかい感性がとても良く表現された素晴らしい作品です。

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2008年6月17日 (火)

まこという名の不思議顔の猫

まこという名の不思議顔の猫
続・まこという名の不思議顔の猫

マーブルブックス
前田敬子、岡優太郎 著



落ち込んだ時や寝る前に温かい気持ちになりたくて見る、
お気に入りの一冊です。

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犬好きの私のココロをがっちり掴んだ、まこちゃん。
くっきりとしたほうれい線とぷっくりしたマズル、
くりくりのお目目の個性的なお顔。
ソファに挟まったおもちゃをふんばって取ろうとしたり、
二本足で立ち上がっての‘おかえりなさい’、
熱心な家さがしなど、
猫らしからぬ姿と行動に、思わず笑っちゃいます。


もともと‘ブサイク猫ちゃん’として注目された
まこちゃんですが、今ではグッズ販売や写真展も開かれ、
雑誌での特集やCDジャケットを飾るまでの人気モノに。


15日に続編が出版されたので、さっそく購入。
前巻ではあまり登場しなかった妹分のしおんちゃんと、
数ヶ月前に家族入りした、弟分のしろたろくんも登場。
充実の内容です。
か・わ・い・い!
そして、おもしろい~☆
ほんわか気分になれます!


みんな保護された猫ちゃんながら、
飼い主さんの愛情のもとにスクスク育ち、
たくさんの幸せを振りまいてくれています。


マーブルブックスのまこちゃんページはコチラ

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2008年6月 8日 (日)

1歳から100歳の夢

1歳から100歳の夢

いろは出版
編:日本ドリームプロジェクト

‘あなたの夢は何ですか?’
この問いかけで始まるこの本は、
2年前に購入して、何度も読み返しています。

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タイトル通り日本全国の1歳から100歳の人が
自分の夢を寄せています。

いろは出版さんならではの、
その方の人柄が現れた写真のセレクトも素晴らしくて、
とっても温かく、夢に満ちた一冊です。

この本を手にした時、私は27歳で、
同年の女性の夢から読みました。
そこには、悪性リンパ腫との闘病を経験して、
誕生日を迎えられることの有難さを感じた彼女が、
「おばあちゃんになりたい」という夢を綴っていました。

「年をとるのがイヤ。誕生日なんて来なければいい」
と毎年言っていた私は、ハッとしました。
年を重ねることは、当たり前のようでいて、
当たり前ではないのですね。
その言葉を目にしてからは、
なるべく言わないようにしています。
(それでもたまに言ってしまうのだけれど。。。)

5歳の男の子の夢は
‘大きくなったら
お母さんを肩車して雲の上を見せてあげること’
と微笑ましく、
86歳のおじいちゃんの夢は
‘18歳の時に出兵し、30歳で帰還した時、
既に亡くなってしまっていた親父と話がしたい’
という切ないもの。
※このおじいちゃんの夢を読むと、いつも涙が出てしまいます

人それぞれに夢のスケールや捉え方は違っても、
夢って大切だな、素敵だなと感じます。
何度読み返しても「夢」がまだ見つかっていない私、
夢さがしは難しいなぁ。。。

夢の本シリーズは、その後、「中学生の夢」「高校生の夢」
「先生の夢」「働く人の夢」が出版されているそうです。

いろは出版ホームページはコチラ
※書籍のほか、レターセットやポストカード等も購入できます
こうへむさんのイラストが好きです☆

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