おすすめ映画

2009年2月23日 (月)

ミスター・ロンリー

2007年 イギリス・フランス
監督:ハーモニー・コリン
出演:ディエゴ・ルナ、サマンサ・モートン


マイケル・ジャクソンのモノマネを続ける青年が、
マリリン・モンローとして生きる既婚女性に想いを寄せ、
自分を見つめなおす、とても切ないストーリーの作品。
「天国の口、終りの楽園。」でのガエルとの共演が懐かしい、
ディエゴ・ルナが主演を務めています。

Misterlonely

パリの街角で「マイケル・ジャクソン」のパフォーマンスを
披露する、一人の青年。
「マイケル」として生きることで
自分の存在意義を確立してきた彼の前に、
ある日、マリリン・モンロー姿の女性が現れます。
一目で恋に落ちた彼が勇気を出して声をかけると、
彼女は提案します。
「夫と娘、モノマネ芸人仲間が暮らすスコットランドに来ない?」
マリリンの傍にいられるなら・・・と、マイケルはパリを後にします。


マリリンに連れられて行った山奥の古城。
そこには、チャップリン、マドンナ、エリザベス女王など、
「他人として生きる人たち」の姿が。
誰もが「本人」としては世の中で生きていけない、
「他人」を演じることでしか自分を保てない・・・
そんな状況に、仲間意識を持つマイケル。


彼らは「史上最大のモノマネショー」と謳った手作りのショーを
企画し、考えをぶつけ合いながらも本番に挑みます。
しかし、そのショーの直後、悲しい出来事が起こり、
マイケルは、「本人」としての人生を歩み始めます。

劇中のマイケルの言葉に、
「世の中の流れが、僕には早すぎる」という表現があります。
時代の移り変わりの早さの中で、順応しつつ自分を持つことの難しさ。
繊細な考えがマイケルを追い詰め、
その苦悩は、マリリンによって解き放たれたのだと感じました。

哀愁漂うボビー・ヴィントンの名曲が、
複雑なストーリー展開に柔らかさと切なさを演出して、ぴったりでした。

公式サイトはコチラ

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2009年2月22日 (日)

旅するジーンズと19才の旅立ち

2005年・アメリカ
原題:The Sisterhood Of The Traveling Pants 2
監督:サナー・ハムリ
出演:アンバー・タンブリン、アメリカ・フェレーラほか

アン・ブラッシュアーズの大ベストセラー
「The Sisterhood of the Traveling Pants」の映画化作品で、
2005年に公開された「旅するジーンズと16才の夏」の続編。
私は「16才の夏」を見ていませんが、十分に楽しめました。

Sisterhoodjpg

主人公は、
マタニティ教室時代から一緒に過ごしてきた、4人の少女たち。
スケッチが趣味という内気な性格のリーナ。
情熱的で優等生タイプのカルメン。
母親の自殺という心の傷を隠して陽気に振る舞うブリジット。
どこか冷めた性格のティビー。
外見や性格がバラバラでも仲の良い彼女たちは、
それぞれ違う大学へ通い始め、夏休みに久々に会うことになります。

ハイスクール時代とは、心の距離を感じ始めた彼女たちは、
16才の時に古着屋で見つけた
「誰が履いてもぴったりなジーンズ」を、
夏休み期間中に一週間ずつ履き回すというルールを再開します。


幸運を引きよせ、4人の友情が再び深まるように・・・
との願いが込められたジーンズは、
それぞれが抱える心の闇やトラブル、
恋の悩みといった場面をつなげていきます。

少女から大人への過渡期の心の脆さや切なさが描かれていて、
「ガールズ青春ムービー」の枠以上の面白さを感じました。

公式サイトはコチラ


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JBさんの自叙伝で写真を見ていたギリシャのセントリーニ島。
白壁と青い海がとてもキレイで行ってみたくなりました。

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2009年2月 1日 (日)

ぼくを葬(おく)る

2005年・フランス
原題:Le Temps qui reste
監督:フランソワ・オゾン
出演:メルヴィル・プポー、ジャンヌ・モロー


ある日、思いがけず、余命3か月を宣告された
主人公・ロマン。
彼が延命治療を受けず、死を受け入れることに決め、
自分の余命と向き合う「生き方」を描いた作品です。

Bokuoku

ロマンは、31歳のフォトグラファー。
ファッション雑誌の撮影など仕事も私生活も順調な彼は、
撮影中に倒れたことから、ガンに侵されていること、
余命が3か月であることを医師に告げられます。

病院を後にした彼は、
大切な人、風景、瞬間を心に刻むかのように、
デジカメのシャッターをきり始めます。

強引に別れを告げた後で恋人の寝顔をそっと撮影する場面、
仲たがいをしていた姉とその子供の姿を、
後ろからそっと撮影する場面。
きっと彼らはロマンが世を去った後で、
自分たちに向けられた深い愛を知るのだと思うと、
涙がこみ上げました。


自分の人生がもう長くないと知ったロマンの行動は、
動揺、苛立ち、悲しみ、孤独、諦めが入り混じり、
とても複雑に描かれます。

きわどい展開、シーンも多々ありますが、
「自分が生きた証を未来へ残したい」と、
彼が希望を見出す展開に引き込まれました。
静かな夕日のラストシーンがとても美しかったです。

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2009年1月26日 (月)

モンテーニュ通りのカフェ

2006年・フランス
原題:Fauteuils d'orchestre
監督:ダニエル・トンプソン
出演:セシール・ド・フランス、ヴァレリー・ルメルシエ


劇場や有名メゾン、オークションハウスなどが建ち並ぶ
パリ8区のモンテーニュ通りのカフェを舞台に、
さまざまな人間模様を描いた、おしゃれで奥深い作品。
音楽や素敵なパリの街並みとともに、
さりげなく人生の教訓を説くストーリーが楽しめました。

Montaigne

主人公のジェシカは、
育ての親である祖母の元から憧れのパリへ出てきたばかり。
運良く由緒あるカフェでギャルソンとして働くことになった彼女は、
お客としてやってくる人達に憧れを抱く日々を送ります。


テレビドラマで大ブレイク中の女優・カトリーヌ、
これまでのコレクションを、ある思いから
全てオークションにかけようとする資産家・グランベール、
著名なピアニストのジャン。

地位や財産に恵まれ華やかに見える彼らは、
みな、人知れず大きな人生の悩みを抱えています。
その悩みは、
キュートで明るいジェシカとのふれあいによって、
それぞれ新しい人生に向かって歩き出すきっかけとなっていきます。
この展開が、ドラマチックながら、とても深みがあって感動的。



劇中で交わされる会話が印象に残りました。
舞台の前、
観客はより良い席だと前の方を取ることに命をかけるけれど、
照明が落ちると気づく。「近すぎると何も見えない」と。

モノの見方、考え方は人それぞれですが、
歩き続けたら時々立ち止まり、
少しひいた位置で見つめなおすことが必要なのかな、と感じました。

ジェシカの祖母がラストで結ぶ、
「恐れずに前に一歩踏み出すことが大切よ。
それで私の人生は輝いたのよ。」という言葉に、元気をもらいました。

「モンテーニュ通りのカフェ」公式サイトはコチラ

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2009年1月15日 (木)

チェ 28歳の革命

原題:The Argentine
2008年・スペイン・フランス・アメリカ
監督:スティーヴン・ソダーバーグ
主演:ベニチオ・デル・トロ


ガエル・ガルシア・ベルナル主演の
「モーターサイクル・ダイアリーズ」で興味を持った
チェ・ゲバラ。
この映画は、彼の半生を描いた超大作の前編、
キューバ革命を成し遂げるまでの戦いを描いた作品です。

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難しい歴史背景の描写はありますが、
社会を変えようと奔走した青年革命家のストーリーとして
鑑賞しました。


後にキューバの国家元首となるフィデル・カストロとの出会い、
社会主義国家に変えるべく参加した反独裁闘争、
そのための過酷な戦い。

そこには、彼の強い信念、聡明さ、大胆さ、優しさが描かれ、
今なお人を惹き付ける人間力を感じました。
何より、主義を主張して立ち上がる強さに感動しました。


カラーで描かれる山中での過酷なゲリラ戦とモノクロで描かれる、
革命後のインタビューやNYでの国連総会演説場面が交錯する
展開に引き込まれました。

ベニチオ・デル・トロ渾身の演技が素晴らしく、
続編の「チェ 39歳別れの手紙」の公開が楽しみです。

チェ28歳の革命 チェ39歳別れの手紙の公式サイトはコチラ

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2008年11月 8日 (土)

ブーリン家の姉妹

原題:THE OTHER BOLEYN GIRL
2008年 アメリカ・イギリス
監督:ジャスティン・チャドウィック
出演:ナタリー・ポートマン、スカーレット・ヨハンソン


16世紀のイングランドを舞台に、
新興貴族の娘で、エリザベス1世の生母であるアン・ブーリンが
ヘンリー8世の王妃の座に上りつめ、処刑されるまでを描いた作品。
その裏に隠されていた、
妹・メアリーとの確執、一族繁栄の思惑を軸に、
女性の生き方にスポットを当てた描写が強烈でした。

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政略結婚が当たり前だった16世紀、
「娘は出世の道具」と公言する父の命により、
妹のメアリーは、姉のアンより先に商家に嫁ぎます。
そして、アンは、
男子の世継に恵まれていなかった国王ヘンリーの
愛人候補として引き会わされることに。
そこには「愛人になって男子を産めば一族は富と地位を得られる」
という、父と叔父の思惑がありました。


しかし、皮肉な事に、
王が惹かれたのは、勝気なアンではなく、家庭的なメアリー。
王の命により、一家は宮廷で生活することになり、
メアリーは既婚でありながら愛人として寵愛を受けます。
‘王に選ばれなかった’ことに深く傷つくアンの心には、
メアリーに対する強い嫉妬心と復讐心が芽生えていきます。


純粋に愛を求めるメアリーと、
地位を求める野心家で知的なアンの対照的な描写が見事です。
一番の理解者でありながら最高のライバルである姉妹の
心理描写がリアルです。
そして、翻弄されていく娘たちを見守ることしかできない
母の深い苦悩から‘女性の幸せとは何か’を学べる気がしました。

結局アンは、
男子を産んだメアリーから王を奪い取り、
離婚を認めていないローマ・カトリック教会との
決別までを強要して王妃に上り詰めます。
しかし、その先には幸せはなく、
反逆罪による処刑という哀しい結末を迎えます。

イングランドを45年間統治し、ゴールデン・エイジと呼ばれた
エリザベス1世。
彼女はメアリーによって育てられたといいます。
王妃として歴史に名を残したアン、
人知れず平和に生涯を終えたというメアリー。
二人の生き方に女性の強さが感じられる作品です。


公式サイトはコチラ

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2008年10月13日 (月)

最高の人生の見つけ方

THE BUCKET LIST

2007年・アメリカ
監督:ロブ・ライナー
出演:ジャック・ニコルソン、モーガン・フリーマン


ガンにより、余命6ヶ月を宣告された二人の老人男性。
エドワードは、
ビジネスに打ち込んできた、家族愛には恵まれない富豪。
カーターは、温かい家庭を持つ、博学な車の修理工。

全く違った人生を送り、価値観もまるで異なる二人は、
病院で同部屋になった縁から友人になり、
「The Bucket List(棺おけリスト)」、
つまり、死ぬまでにしたいことを
リストアップし、一緒に実行することにします。

Saikou_3
スカイダイビング、タトゥー、
カーター憧れのマスタングでのレース、
ピラミッド見学など、
おじいちゃん二人のはしゃぎっぷりが素敵です。


看護士で死を覚悟しているカーターの妻は、
二人の計画に難色を示し続け、エドワードに
「夫を返して欲しい。生きているうちに失いたくない。」
と訴えます。
カーターは妻の気持ちを察しつつも、
「手をつないで歩いていた頃の気持ちを思い出せない」
と、妻と向き合うことを避け、
エドワードとの世界旅行を続けます。
年を重ねてきたからこその、死を前にした苦悩、
家族への思い、
人生と向き合うことの重さを感じました。


カーターがエドワードに問いかけたシーンが印象的です。
人は死ぬと天国の扉の前で二つの質問をされ、
その答えによって許可が出るのだと。
「人生に喜びを見つけたか?」
「他者に喜びを与えたか?」
そして二人は、
それぞれの答えを出すために家に戻ります。



明日があると分かっているから、
「今度やろう。」とか「春になったら・・・。」と
考えるものだけど、それは気持ち次第だと言うこと。
色々な人との関わりの中で生きていること。
改めて肝に銘じたいと思います・・・。

公式サイトはこちら

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2008年9月22日 (月)

ぐるりのこと。

監督:橋口亮輔
出演:木村多江、リリー・フランキー

予定通りに物事を進めたい性格の翔子と、
ルーズなカナオの夫婦を軸に、
‘心が壊れること’‘立ち直ること’が描かれた作品。
丁寧な描写の日常シーンの重なりがとても温かく、心に響きます。

Gururi

美大生時代から付き合っている翔子とカナオは、
翔子の妊娠をきっかけに結婚。
膨らんだおなかに幸せを感じる翔子。
靴修理のバイトをするカナオも、そんな翔子を愛おしく見つめます。
そんな時、カナオにテレビ局から法廷画家の仕事が舞い込みます。
気乗りしないものの、画力を活かせる仕事であること、
子供が生まれる経済的な事情から引き受けるカナオ。


しかし、赤ちゃんは亡くなり、
翔子の心は、悲しみのあまり、少しずつ壊れていきます。
とても繊細で痛々しい翔子の様子の描写は、
前作「ハッシュ!」がカンヌ映画祭でも高く評価されたのちに
鬱病となった橋口監督自身の体験がベースとなっているようです。


法廷画家として、
90年代に起こった事件の裁判を描き続けるカナオ。
そこにも、ある意味で心が壊れてしまった容疑者、
深い絶望に苦しみ、心を痛める被害者の姿があります。
そんな人々を見つめつつ、
傍にいる翔子を支えるカナオのおだやかな優しさが素敵です。

「きちんとしたいのにきちんと出来ないの!」
「あたし子供をだめにした」
「ずっとそばにいるのに愛されているのか分からない」
心の闇を吐露する翔子にカナオは、
「嫌われたっていいじゃない。
好きな人にたくさん好きになってもらえば」と、優しく包み込みます。

橋口監督は作品について、
「希望とは、人と人とのつながりの中にしか生まれない。
そういう映画を作ろうと思いました。」とコメントしています。

人は強くないし、心が壊れてしまうこともある。
けれど、立ち直ることができる。
それは家族であれ、恋人であれ、友達であれ、
人との愛を感じることができればきっと、そう感じました。

※ハッシュ!主演の片岡礼子さんと田辺誠一さんをはじめ、
据えられている俳優陣が素晴らしいのも見どころ。

ぐるりのこと公式HPはコチラ

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2008年9月14日 (日)

モンスター

モンスター
MONSTER
2003年・アメリカ、ドイツ

監督:パティ・ジェンキンス
出演:シャーリーズ・セロン、クリスティーナ・リッチ



アメリカ史上初の女性連続殺人犯で‘モンスター’と呼ばれた
アイリーン・ウォーノス。
彼女を凶行へ駆り立てた背景を追った作品です。

Monster

衝撃的で痛々しいそのストーリーからは、
‘凶悪犯’というより‘愛に恵まれなかった哀れな女性’
という印象を受けました。


幼い頃に親に見捨てられ、虐待を受けて育ち、
13才から生きるために娼婦となったアイリーン。
数々の犯罪を繰り返し、
すさんだ生活を送り続ける人生に絶望した彼女は、
自殺を決意した夜にティリアという少女に出会い、
恋に落ちます。

初めて温かい感情を知って、ティリアにのめり込む、アイリーン。
しかし、2人で穏やかな生活を送りたいと願うアイリーンに、
ティリアが放った言葉は、
「私のためにもっと稼いできて!」

教養も何も無いアイリーンがお金を稼ぐためには売春しかなく、
彼女は再びダークな世界に戻ります。
そこから歯車はさらに悪い方向へ回り、
年齢的に稼ぎの悪い彼女は強盗、殺人に手を染めてゆきます。
そして、逮捕、死刑――――。

彼女は何のために生まれ、生き、愛を知り、墜ちていったのか。
コピーにもなっている、
「なぜ、愛を知ってしまったんだろう」が心に重く響きました。

この作品で、
醜女メイクで体当たりの演技をみせたシャーリーズ・セロンは、
アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞しています。
彼女は、
母親が正当防衛で父親を射殺する現場に居合わせた
過去を持つのだとか。
アイリーンの抱える闇を瞳の中にまで表現した
迫真の演技が素晴らしかったです。

日本語版公式サイトはコチラ

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2008年9月11日 (木)

裸足の1500マイル

裸足の1500マイル
Rabit Proof Fence

2002年・オーストラリア
監督:フィリップ・ノイス
出演:エヴァーリン・サンビ、ローラ・モナガン、ディアナ・サンズベリー


1890年代から1970年代にかけて、
オーストラリアの先住民・アボリジニの混血児に対して行われた
隔離・同化政策。
白人社会に適応させる名目で親から引き離し、
白人教育を強制的に受けさせるこの制度の犠牲になった子供達は
‘盗まれた世代’と呼ばれ、
約10万人にのぼると言われているそうです。

Hadashi_2

この作品では、
1931年に母親と引き離された3人の少女達が、
お母さんに会いたい一心で収容所を抜け出し、
故郷まで徒歩で向かった実話が描かれています。
その距離、1500マイル(2400km)────。
この距離は、
北海道・稚内から沖縄・那覇までの距離に相当するそうです。


執拗な追跡から逃れ、
厳しい大自然の荒野を3ヶ月もの間歩き続けた少女達。
頼りにするのは、大陸を縦断するウサギ避けフェンス。


14才の姉・モリーは、8才の妹と10才のいとこを励ましながら、
足跡がつかないように川の中を歩いたり機転をきかせて、
逃亡し続けます。
その気丈さには涙を超えて、人間の本質の美しさを感じました。


モリーはこんな言葉を残しています。
「収容所の他の子供達は母親のことを忘れてしまうほど幼かった。
でも、私はその時14才で母をよく覚えていた。
家へ、母のところへ帰りたかった。」

‘お母さんに会いたい!’という子供心を中心にした描写が、
迫害や人種差別といった問題を押しつけではなく、
自然に、そして深く考えさせてくれます。

日本語版公式サイトはコチラ

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2008年9月 4日 (木)

愛してる、愛してない

愛してる、愛してない
A la folie... pas du tout

2002年・フランス
監督:レティシア・コロンバニ
主演:オドレィ・トトゥ


当時26才の若き監督が手がけた、トリックの効いた作品。
おしゃれでセンスの良いフランス映画に
ブラックを絡めた発想に驚き、です。

Ai

夢見がちな画学生のアンジェリクは、
心臓外科医であるロイックに想いを寄せています。
けれど、彼には妊娠中の奥さんが・・・。
叶わない、切ない想いを抱え、
それでも一途にロイックを想い続ける彼女を応援したくなる・・・
と思っていると、お話は早々に結末を迎えます。


そして、違う角度から、再度同じストーリーが展開していきます。
すると、彼女の‘純愛’は‘狂気’に変わり、
真実が次々に露呈していきます。
その過程が、実に恐ろしく、狂おしい。
とってもキュートなアンジェリクの笑顔も、
後半は全く違った印象に見えます。
衝撃の結末を迎えるラストまでぐっと引き付けられる、
サスペンス的ラブストーリーです。


チラシにもある、
‘あなたがバラをくれたから、私は心にケガをした’。
作品を端的に表す優れたコピーです。

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2008年8月30日 (土)

イン・ザ・ベッドルーム

イン・ザ・ベッドルーム
~IN THE BEDROOM~

2001年・アメリカ
監督:トッド・フィールド
出演:トム・ウィルキンソン、シシー・スペイセク


大切な家族がある日突然、殺されてしまったら・・・。
犯人を憎む気持ち、守ることができなかった後悔。
残された遺族の葛藤や苦しみをシリアスに描いた作品です。

Bed

メイン州の漁師町で開業医をしている
マットと妻・ルースの中年夫婦。
一人息子・フランクは大学生で、夏休みで帰省中。
フランクは、近所に住む年上で子持ちの女性・ナタリー
との恋愛を楽しんでいます。

ナタリーには、
別居中のDV夫・リチャードがつきまとっているため、
父親のマットはその関係を心配しつつも黙認し、
母親のルースは早く別れるように願います。
そんな両親の気持ちと、
ナタリーへの愛の狭間で揺れるフランク。

そして、ついに悲劇が起きてしまいます。
激昂したリチャードの凶弾によって、
フランクが命を落としてしまうのです・・・。

愛する息子を失い呆然とする夫婦。
ここから2人の苦しみの日々が始まります。
現実の辛さゆえに、
感情を爆発させ、互いを罵りあい、責め合う夫婦。
画面を通して、
張りつめた重苦しい空気が伝わってきます。


物語は、
リチャードが故殺と認められ、
たった5年の刑に処される可能性が高いと知った
父・マットが取ったある行動でラストを迎えます。
夫婦が許し合い、理解しあった末のこの展開が、
すーっと胸の中に冷たさを感じさせます。

ヒューマンドラマに終わらない、重厚なサスペンス作品です。

※個人的には、ナタリーをマリサ・トメイが演じているのが
懐かしかった!この作品では、
アカデミー賞の助演女優賞にノミネートされたそうです。

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2008年8月27日 (水)

街のあかり

原題:Laitakaupungin valot
英題:Lights in the Dusk
2006年・フィンランド
監督:アキ・カウリスマキ
主演:ヤンネ・フーティアイネン



カウリスマキ監督が、
敗者三部作の最終章として手がけた作品。

ヘルシンキで夜間警備の仕事をする孤独な男性の
ツイてない日々を淡々と描いています。

Akarijpg

同僚達からの疎外、好きになった女性からの酷い裏切り、
主人公・コイスティネンのあまりの救われ無さには、
「・・・・・・・・・・・・。」となってしまうほど。

しかし、負け犬と罵られ、不幸の連続にも、
表情を崩さず、語らない(言い訳しない)
主人公・コイスティネンの姿に淡い光を感じるのは、
それが「諦め」ではなく、「現実を受け止める」という
まっすぐな姿勢だからかもしれません。

コイスティネンと、ずっと彼を気にかけている女性が交わす、
「希望を失っていないのね。」
「当たり前さ。」という台詞が印象的です。

ヘルシンキの寒々しい風景の中、
ほのかな温かさを感じさせるラストが心地良いです。

必要最小限の台詞、どこか冷め切った表情の登場人物達、
絶妙にストーリーに絡んでくる一匹の犬。
シンプルなストーリーの中、
室内の内装や飾られた花、洋服などが
さりげなく華を添えているのが、素敵です。

「浮き雲」「過去のない男」(カンヌ映画祭グランプリ)も
見てみたくなりました。

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2008年8月21日 (木)

チル・アウト!

CHILL OUT
DESCONGELATE!

2003年・スペイン
監督:フェリックス・サブロソ
出演:ペポン・ニエート、カンデラ・ペーニャ

「CHILL OUT」(火照りを冷ます:リラックスしての意)と
タイトルされたこの作品は、
ペドロ・アルモドバル監督の弟、
アグスティン・アルモドバルが製作総指揮をしたブラックコメディ。
スペイン流のユーモアとイイ感じの雑さが楽しめます。

Chillout

主人公のフストは、中年の冴えない芸人。
弟のベルトが経営するバーでステージに立つものの、
成功や名声からは程遠い生活を送っています。
「何度か幸運が通るのを見たが、速すぎてひかれそうになるだけ」
と、ネガティブな性格で、不安になると過呼吸症に陥るほど。
そんな彼の得意な芸は、声帯模写。
他人の声を完璧に真似ることができ、
この芸が巻き起こる騒動のキーとなります。

そんなフストを支える妻・イリスは、
マクロビオティックの料理教室を自宅で開く、
強い信念を持つ女性。
そして、イリスと嫁・姑関係で対立しているのが、
フストの母・カティ。
カティのキャラクターが何とも良いです。
元劇団女優だった彼女は、冷凍食品崇拝者で、
色々な食べ物を‘解凍’することに幸せを感じる人なのです。
※原題の「DESCONGELATE!」は、「お前自身を解凍しろ!」
という言葉だとか。
カティの存在も物語のエッセンスになっているんですね~


下町でパッとしない毎日を送る一家に、
ある日、大きなチャンスが巡ってきます。
ジャンキーな映画監督にフストが才能を見い出され、
俳優(それも主演!)デビューが決まるのです。
一家は、周辺の人達を巻き込んで大フィーバー!

大金が手に入るから生活が楽になると喜ぶ妻・イリス。
店を拡大できると夢が膨らむ弟・ベルト。
自分も出演できるんじゃないかと目論む母・カティ。


しかし、事は一転して、
映画監督がオーバードーズで食事の席で死亡してしまいます・・・。
何としても出演契約を交わし、出演料を手にしようとする
フストとイリス夫婦が隠ぺいを画策するのが実にブラック。


コメディーから一気にシリアス展開になるのにも
驚きですが、ラストのオチにも「!」な作品。
妻・イリスのマクロビオティックになぞらえて、
「結果を急がず過程を楽しむ」と結ぶラストが素敵です。
少しの毒々しさ、皮肉、ユーモアにあふれる
スペイン映画の魅力がつまった作品です。

※エンドロールのアニメーションは必見!


公式サイトはコチラ(スペイン語版)

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2008年8月 9日 (土)

ボルベール~帰郷~

VOLVER

2006年・スペイン
監督:ペドロ・アルモドバル
出演:ペネロペ・クルス

アルモドバル監督が、
「オールアバウト・マイ・マザー」「トーク・トゥー・ハー」に続く、
女性賛歌三部作の最終作として仕上げた作品。

この監督の「生」「死」「愛」「性」の描写力は、
いつもパワフルで圧倒されます。
そして、鮮やかな色彩!
毎作、エンドロールまでばっちり楽しめます。

この作品でも、女性達の力強い生き様が、
監督ならではの毒々しいストーリーと共に描かれています。

Volver

ペネロペ・クルス演じるライムンダは、
ある悲しい秘密を抱えながら、
失業中の夫の分まで働く、たくましい一児の母。


ある日、娘のパウラが父親から乱暴されそうになり、
殺害してしまうというショッキングな出来事が起こります。
ここで、パウラの本当の父親は誰なのか、ということが
衝撃の結末へとつながります。

未来ある娘をかばい、
夫の死体を空き店舗の冷凍庫へ隠蔽するパウラ。
そんな時、
母親代わりに育ててくれた叔母が亡くなったとの報せが届きます。
そして、葬儀のため、姉と共に故郷へ帰った彼女達は、
奇妙な噂を耳にします。

それは、かつて火災によって、
父親と共に亡くなったとされる母親が生きていて、
叔母の看病をしていた、というもの・・・。

ライムンダ、娘のパウラ、姉、母、叔母、隣家に住む病身の女性、
6人の女性達が複雑にからみあうストーリー展開、
俳優人の力強い演技が魅せてくれます。

特にライムンダの歌うタンゴ「ボルベール」は、
胸に迫るものがありました。

この作品は、
カンヌ映画祭の最優秀女優賞を6人全員が獲得するという、
快挙を成し遂げています。

公式サイトはコチラ
※超かっこいいデザイン!
ペネロペと監督のインタビューなども公開されています

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2008年7月31日 (木)

ウェディング・バンケット

ウェディング・バンケット
喜宴、英題:The Wedding Banquet

1993年・台湾、アメリカ
監督:アン・リー
出演:ウィンストン・チャオ、ミッチェル・リヒテンシュタイン



「ブロークバック・マウンテン」などで知られる
アン・リー監督の初期作品。

ゲイカップルと一人の女性との関係を中心に、
家族の在り方が描かれています。

Wedding

ニューヨークでのビジネスで成功を収めている台湾人のウェイトンは、
整体師(医療技師?)をしているアメリカ人のサイモンと
穏やかな同棲生活を送っています。


息子がゲイとは知らずに結婚を急かす台湾在住の両親を
あしらい続けるウェイトンのもとへ、
ある日両親が訪ねてくることになってしまいます。


そこで、親を安心させるためウェイトンは、
自分が管理しているアパートの住民で画家を志すウェイウェイと
偽装結婚することに。
※ウェイウェイもグリーンカード目当てで合意


ウェイウェイを気に入った両親は、
簡単な式だけで済ませようとする二人に、
盛大な結婚式をするよう説得。
華やかな台湾式の披露宴シーンが見事です。
色彩が素晴らしく豪華!
※古い映画なので今はもうちょっと簡素化されているのかな?


偽装結婚だったウェイトンとウェイウェイですが、
披露宴後に宿泊したホテルで関係を持ってしまい、
ウェイウェイが妊娠してしまいます。


5年間順調だったウェイトンとサイモンの関係には、
大きな亀裂が・・・。
真相を知らず、不穏な雰囲気にとまどう滞在中の両親。

親子、パートナー、
それぞれの想いが希望のあるラストへつながっていきます。

特にウェイトンのお父さん役のラン・シャンさんの、
多くを語らずに息子に理解を示す穏やかな演技が光っていました。

※映画を見た当時、
サイモン役のミッチェルさんが気に入ったんですが、
たしか美術系のお仕事をされていたようで、
この作品以降は俳優業から遠のいたようです。残念。

作品は、ベルリン国際映画祭で金熊賞、
ゴールデングローブ賞の外国語映画賞を受賞、
アカデミー賞の外国語映画賞にもノミネートされました。

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2008年7月28日 (月)

8月の鯨

8月の鯨
~THE WHALES OF AUGUST~

1987年・アメリカ
監督:リンゼイ・アンダーソン
出演:リリアン・ギッシュ、ベティ・デイビス


小さな島の別荘で夏を過ごす老姉妹を中心に、
「老い」をとても静かなトーンで描いた作品です。

Whalesjpg

気難しい性格で目の不自由な姉・リビー、
そんな姉をかいがいしく世話をする妹・セーラ。
二人は、互いに夫を亡くし、
今は、ごくわずかな友人に囲まれて静かな生活をしています。


未だ(老いたからこそ?)自分を開放できずに殻に閉じこもるリビー、
老いてもなお好奇心を持ち、前向きな精神で生きるセーラ。

長い時間をともに過ごしてきた姉妹だけど、
分かり合えない部分もある。
それぞれの長い人生のなかで重ねてきた経験や
感情で形成されてきた、対照的な姉妹の姿が印象的です。


特に印象に残ったシーンは、
妹のサラが亡き夫との結婚記念日を祝うためにドレスアップをして、
写真を前にワイングラスをかたむけるところ。
とても胸が熱くなりました。


タイトルは、
この島に毎年8月になると姿を見せる鯨に由来していて、
彼女たちにとって
「今年も鯨を見ることができた」という
生の象徴として描かれている気がしました。


老いの美しさ、生きることの意味が、
何気ない日々のエピソードで描かれていて、
大女優二人の深みのある演技が素晴らしい作品です。

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2008年7月22日 (火)

ニュースの天才

ニュースの天才~SHATTERED GLASS~

2003年・アメリカ
監督:ビリー・レイ
主演:へイデン・クリステンセン


アメリカの名門政治マガジンでエディターを務める若い記者が
実際に引き起こした、大スキャンダルを描いた作品です。

News

25才のスティーブン・グラスは、
アメリカ大統領専用機エア・フォースワンに
唯一設置されている政治マガジン「THE NEW REPUBLIC」
で最年少のアソシエート・エディターとして働く青年。
ある時から彼は、
政財界のゴシップを次々とスクープし続け、
スーパー・ジャーナリストとして脚光を浴びるようになります。


しかし、情報の不自然さを感じた他誌のエディターが
真実を確かめる調査に乗り出したことから、
スティーブンがニュースをねつ造していることが発覚。
なんと、
彼がスクープとして世に送り出した41のニュースのうち、
27つがねつ造記事だったのです。


この事件は1998年に発覚したとのことで、
真実=ニュース、という図式が壊された当時の
衝撃と影響は大きかったと思います。


ねつ造発覚後のスティーブンの言動が痛々しく、
エリートからの転落、哀れな人、という感じ。
※原題のShattered Glassはそれを表しているのかな?

映画の製作にあたっては、
事件の舞台となったTHE NEW REPUBLICで編集長を務めて
いた二人の方が語った真実が生かされているとのことで、
すごくリアルです。

スティーブンをねつ造に駆り立てたものは何だったのか、
ニュースとは、マスコミとは、真実とは・・・??
単なる「おバカな記者の話」ではない、深みがある作品です。

公式サイトはコチラ

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2008年7月19日 (土)

クライマーズ・ハイ

クライマーズ・ハイ

監督:原田眞人
出演:堤真一、堺雅人

久々に、
圧倒されるスケールの大きな邦画を観ました。
鑑賞後、しばらく衝撃と興奮が冷めませんでした。

数年前にNHKで放送された、
佐藤浩市さん主演のドラマも秀作でしたが、
こちらも、躍動感ある構成、登場人物の個性が際立っていて
素晴らしかったです。

Climbershigh

1985年8月12日に起きた日航機墜落事故。
乗客524人のうち520人が犠牲となる
未曾有の大事故の現場となった、
群馬県の地元紙・北関東新聞社の記者達の報道にかける熱意が、
社内事情や人間関係を織り交ぜて描かれています。

※もちろん新聞社は架空で、
原作の横山秀夫さんが上毛新聞の社会部記者として当時、
事故取材にあたった経験が基になっています。

想像を遥かに超える凄惨な事故状況、
過熱する報道合戦、
締切ギリギリまで誠実な報道へと向かう
記者達のプロフェッショナルな姿、
地方紙ならではの生臭い社内情勢、
特ダネを狙うスリルと高揚がリアルな迫力で描かれます。
そして、そこにある人としての心のあり方、
事故後、数十年を経た主人公の心のわだかまりが解ける様子が、
横軸に据えられていて人間ドラマとしての魅力も感じました。

キャッチコピーである「命を追った、あの夏。」に
納得の名作です。

公式サイトはコチラ

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2008年7月13日 (日)

迷子の警察音楽隊

迷子の警察音楽隊
Band's Visit Limited Partnership

2007年・イスラエル、フランス
監督:エラン・コリリン
出演:サッソン・ガーベイ ロニ・エルカベッツ 

公演のためイスラエルを訪れたエジプトの警察音楽隊が
間違えて行き着いた街の住民と心の交流をする様子を描いた作品。

邦題を見ると‘珍道中’なイメージですが、
エジプトとイスラエルは中東戦争を繰り返してきた関係なので、
交流と言っても、とてもぎこちなく、微妙な空気が流れます。
ただ、政治的な重さなどは描かれていないので、
ヒューマンドラマとして楽しめました。

Maigo

真面目なリーダー・トゥフィーク率いる、
8人のアレキサンドリア警察音楽隊は、
公演先の街への行き方を間違え、ある片田舎の街へたどり着きます。


宿泊できるホテルも無く、
移動しようにもバスの運行が終わったことを知り、
困り果てる音楽隊に、食堂を切り盛りする独身女性のディナが
救いの手を差し伸べます。
音楽隊は3グループに分かれ、
ディナの家、常連客のイツィクの家、食堂で一夜を過ごすことに。

実は哀しい過去を持つトゥフィークに好意を抱くディナ、
夜の街へ繰り出したプレイボーイのカーレド、
奥さんの誕生日に隊員を泊めることになったイツィク家の
気まず~いやり取り。
それぞれの一夜が丁寧に描かれていて、
カーレドがウブな男の子に恋愛指南をするシーンには笑いの要素も。

ブルーの爽やかな制服とイスラエルの乾いた風景のコントラスト、
小さな笑い、人を結ぶ音楽、素朴な幸せへの共感が重なりあって、
国や環境を超えた心のふれあいにつながっていく様子が
とても美しくまとめられています。
素直な感動が得られる作品だと感じました。

※スイカを食べる習慣や、ローラースケートで踊るダンスホールなど、
イスラエルの文化を知ることができたのも楽しかったです。

作品は、カンヌ国際映画祭の‘一目惚れ賞’やイスラエルアカデミー賞など、
数々の映画祭で絶賛されたそうです。

公式ホームページはコチラ

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2008年6月26日 (木)

ある子供

ある子供~L'Enfant~

2007年・フランス、ベルギー
監督:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
出演:ジェレミー・レニエ、デボラ・フランソワ



若い未熟なカップルが直面する現実と葛藤から、
「大人になること、成長することって?」
を考えさせられる作品です。


Kodomo

定職につかず、
盗みをはたらいてはその日暮らしをする
20才のブリュノ。
ある日、
18才の彼女・ソニアが赤ちゃんを出産します。


暮らす場所、生活費すらないなかで
ブリュノは職を求めますが、
不況のなか、就職困難な現実に突き当ります。


若くても出産を機に母親としての強さを持ったソニア。
一方、
親の愛情を十分に受けず育ったブリュノは
命の重さをいまいち実感できず、
ソニアに黙って赤ちゃんを売ってしまいます。


あまりのショックに失神してしまうソニアを見て、
自分の愚かな過ちに気付き、赤ちゃんを取り戻すブリュノ。
それでもなお、最低な生活からは抜け出せません。

拘置所でのラストシーンがとても切なく、印象的です。

心が成長できないまま、大人になったブリュノ、
抜け出したくても抜け出せない最低な生活。
今の日本にも通じる問題をはらんだ作品には、
「子供な大人」が描かれていて、
鑑賞後、う~ん・・・と唸ってしまいました。

この作品は、2005年のカンヌ国際映画祭で
パルムドール大賞を受賞しています。
※両監督にとって2度目の受賞となる快挙だそう

公式サイトはコチラ

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2008年6月24日 (火)

やさしい嘘

やさしい嘘
Depuis qu'Otar est parti...

2003年・フランス、ベルギー
監督:ジュリー・ベルトゥチェリ
主演:エステル・ゴランタン

おばちゃんを中心に、
3世代の女性の想いや生き方が交錯する、
とっても温かな作品です。

Uso

旧ソ連の小さな国・グルジアで、
夫に先立たれた娘と孫と暮らすエカおばあちゃん。
娘とあまり仲が良くないおばあちゃんの楽しみは、
フランスで働く息子からの手紙を、
孫娘のアダにフランス語で読んでもらうこと。
息子の近況と無事を知ることが、
おばあちゃんの元気の素になっています。
※受け取った手紙にキスするのがキュート!

しかし、その息子が不慮の事故で急逝してしまいます。
娘のマリーナと孫のアダは、
その事実をおばあちゃんに伝えることが
どうしてもできません。
そこで、手紙を創作して、
まだ息子が元気でいるかのように見せかけることに・・・。

手紙をくれるのに電話してきてくれない息子を
心配したおばあちゃんはフランス行きを決意。
大切な本を売り払って旅費を作ります。
エカおばあちゃん、マリーナ、アダ、
3人の女性は、それぞれの想いを抱えフランスへ。
そして、真実を知ったおばあちゃんは、ある「嘘」をつきます。

大切だから伝えられない悲しい事実、
大切だから生まれる嘘。
家族が互いに思いあう、
その深い愛情が、じんわりと心に沁みます。

物語の背景には、
混乱したグルジアの社会情勢も描かれていて、
マリーナの焦燥感や空虚感、
フランス語を生かして広い世界へ羽ばたきたいと願う
アダの姿などが盛り込まれていて興味深かったです。

※エカおばあちゃん役のエステルさんは、
85才でデビューした方で、
95才の現在も現役女優として活躍されているようです。

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2008年6月22日 (日)

つぐない

つぐない~Atonement~

2007年 イギリス
監督:ジョー・ライト
主演:ジェームズ・マカヴォイ キーラ・ナイトレイ



少女がついてしまった嘘が、
愛し合う二人の運命を残酷に引き裂き、
少女が贖罪の道を歩み続ける、というお話。
イギリスの小説家、
イアン・マキューアンの「贖罪」の映画化作品です。


Tsugunai


物語は、
少女が「嘘」をついてしまう1935年の夏、
第二次世界大戦中の1940年、
著名な作家となった彼女が小説としてその罪を綴り、
償いをする「今」のエピローグへとつながっていきます。

官僚の父を持つ裕福な家庭で育つ13才のブライオニーは、
感受性が豊かで作家を夢見る女の子。
使用人の息子で、大学卒業は庭仕事を手伝っている
ロビーに淡い恋心を抱いています。

そのロビーと、ブライオニーの姉・セシーリアは幼なじみで、
ケンブリッジ大学の同級生同士だった仲。
医者を志すため家を離れるというロビーに対して
セシーリアは苛立ちを募らせ、それが恋心だと自覚します。
そしてロビーもまたセシーリアに思いを寄せていて、
身分を超えて二人は愛し合うようになります。

幸せが見えた矢先、
二人に嫉妬したブライオニーがついてしまった「嘘」。
その「嘘」が、
愛し合う二人を悲しい運命に突き落とし、
ブライオニーは、
その後の長い人生を贖罪し続けることになります。
老年になった彼女が、
「最終作にして、処女作」という作品「贖罪」を書き終え、
テレビインタビューに応じるラストシーンが印象的です。



ブライオニー役は時代によって3人の女優が演じますが、
特に少女時代の
シアーシャ・ローナンの繊細な演技が光ります。
※これがデビュー作とのことでこれからが楽しみです

また、ロビー役のジェームズ・マカヴォイも素晴らしく、
セシリア役のキーラ・ナイトレイの凛とした美しさも輝いています。

この映画は、
第61回イギリスアカデミー賞の作品賞、
第80回アカデミー賞では作品賞ほか7部門にノミネートされ、
作曲賞を受賞しています。

公式サイトはコチラ

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2008年6月14日 (土)

きれいなお母さん

きれいなお母さん-漂亮媽媽-
1999年・中国
監督:スン・チョウ
主演:コン・リー

聴覚障害を持つ息子を育てるシングルマザーを、
コン・リーがスッピン(に見える)で
力強く演じた作品です。

当時すでに
「さらば、わが愛・覇王別姫」や「始皇帝暗殺」
などの華やかな作品で大女優として評価されていたので、
この映画を見た時は
「これがコン・リー?!」とビックリしました。

Okaasanjpg

夫との離婚後、耳が聞こえない一人息子を引き取り、
普通の子と同じ小学校に通わせたいと願って
勉強を指導する母。
息子が壊してしまった補聴器代を工面するため、
仕事をかけもちし、生活に追われる日々。

なりふり構わず、‘わが子のため’と、
必死に働く姿は、
母親のたくましさ、深い愛情に満ちています。
その姿がなんとも美しく映し出されています。
映画では、
「子どもにとって母親は、世界一美しく、輝く存在」
だということを伝えています。

シングルマザーという弱い立場をつけねらう
悪い男も出てきて、
時には深く傷つきながらも、
非常な現実に打ちのめされながらも、
応援や理解してくれる人達に励まされながら
母親として成長していく姿が
過剰な演出ではなく描かれていて
鑑賞後、やさしい気持ちに包まれます。

素晴らしい演技で息子役を演じたガオシンくんは、
本当に耳が聞こえない子なのだそうです。
本当の親子のような、
感情が通じ合っているような二人の共演が素敵です。

今年公開された「母べえ」に通じるような、
母親の凛とした強さ、美しさを讃えた作品です。

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2008年6月11日 (水)

THE KING

The King〜キング 罪の王〜

2005年・アメリカ
監督:ジェームズ・マーシュ
主演:ガエル・ガルシア・ベルナル

最悪のタブーを冒す青年・エルビスを
ガエルが美しくも恐ろしく演じています。
彼の演技はいつも素晴らしいですが、
この難役を魅力的に演じる怪演には感嘆です。

King

海軍を退官して、亡き母から聞いた、
父のもとを訪ねるエルビス。
快く迎え入れてくれると信じて期待していた
エルビスを、父は冷たくあしらいます。


それは、神職に就き裕福で幸せな家族に恵まれている
今の自分にそぐわない存在だから。

それを感じ取ったエルビスの中には、復讐心が生まれ、
16歳の異母妹・マレリーを利用した
最悪の復讐劇が始まっていきます。


子が親に無条件に寄せる愛情、
それを踏みにじられた時に憎しみへと加速する
‘愛’がとても恐ろしいです。

ラストシーンで父子が対峙するシーンに、

映画のコピー‘懺悔しよう、愛のために。’が重なります。


凶行に突き進むエルビス、
メンツを保つため残酷な振る舞いをしてしまう父、
異母兄とは知らずエルビスの虜になってしまう妹、
そんな妹を守ろうとする兄、
夫を信じ家庭を守ろうとする母。
それぞれの存在が絡み合うストーリーが強烈です。






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2008年6月 4日 (水)

空を飛ぶ夢

空を飛ぶ夢
~MAR ADNTRO THE SEA INSIDE~
2004年 スペイン
監督:アレハンドロ・アメナーバル
主演:ハビエル・バルデム

20代半ばに不慮の事故に遭い、
体が不自由になった主人公・ラモン。
以来、20数年間ベッドでの生活を余儀なくされた彼が、
法律では認められていない尊厳死を選択し、
実行するまでを描いた作品です。
※実在したラモン・サンペドロ氏の手記
「LETTERS FROM HELL」を基にしているのだそう

Seainside

主人公を演じるのは、
「ノーカントリー」でアカデミー賞助演男優賞に輝いた
ハビエル・バルデム。
彼は当時30代半ばですが、
50代の主人公を見事に演じています。

尊厳死・・・。
すごく重いテーマですが、
逆に、「生きるって何?」を考えさせられました。
ラモンの葛藤、心理を通して、
死を選択することは、時に‘弱さ’はなく、
‘強さ’でもあるのだと感じました。
献身的に介護をする家族や
彼を愛する女性からの深い愛情を感じながらも、
ラモンは自分を貫くために
尊厳死を選んだように思えました。

‘自分らしく生きられないのなら、いっそ終えてしまいたい’
と、死を望むラモン。
‘生きてくれているだけでいい’
と、生を望む家族や周囲。
どちらが正しいかどうかは結論が出ない、出せないこと。

ラモンが空想の世界で、空を飛ぶシーンが感動的です。
※実際にラモン氏が住んでいたエリアを
空撮したものなのだそうです


また、尊厳死を迎えるために自宅を出るシーンでは、
見送る家族のやり切れなさ、
寂しさが強く伝わってきて号泣しました。
観賞後、深く考えずにはいられない秀作です。

作品は、2004年アカデミー賞・外国映画賞や、
スペインのゴヤ賞で史上最多14部門を制覇しています。

オフィシャルサイト(英語版)はコチラ

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2008年4月 8日 (火)

潜水服は蝶の夢を見る

潜水服は蝶の夢を見る
~Le Scaphandre et le Papillon~
2007年 フランス
監督:ジュリアン・シュナーベル
主演:マチュー・アマルリック

予告編を見ただけで号泣してしまった作品。
生きるってなんだろう、
心の強さって何だろうって事を悩んでいる時に観ました。

Sensuifuku

フランス版ELLE誌編集長として人生を謳歌していた
42才のジャン=ドミニク・ボビー。
別居中の息子とのドライブ中に脳梗塞を発症。


数日後に意識を取り戻した彼は、
左まぶた以外が麻痺していて言葉も
発する事ができない状態に絶望します。
瞬きでアルファベットを綴る方法で
コミュニケーションできるようになった
彼が初めに発した言葉は「死にたい」・・・。


意識も記憶もしっかりしているのに、
体を動かせない、意思を伝えられない現実は、
どれほど深い悲しみがあっただったろうと、
涙が止まりませんでした。

そして、彼を愛する家族や恋人、
同僚も同様に辛さと向き合います。
高級外車に乗りオシャレだった自慢の父の
よだれを拭い涙する息子、
会いに行きたくとも外出出来ずに
涙する年老いたお父さん、
心が他の女性にあるのに献身的に支える奥さん、
元気な彼の姿しか記憶に留めておきたくないと
病院へ訪ねてこない恋人。
彼を取り巻く人たちの心情の繊細な描写、
彼がたどる記憶や空想の鮮やでユーモアな描写に
ぐっと引き込まれました。

彼は深い絶望の底にありながら、
「身体は潜水服を着たように重くても、
ぼくの想像力と記憶は蝶のように自由に羽ばたく」
と、20万回以上の瞬きによって自伝を書きあげます。
この自伝は世界31カ国で出版され、
フランスでは大ベストセラーを記録したそうです。

この映画を見て、
脊髄小脳変性症とたたかった「1リットルの涙」の
木藤亜也さんを思い出しました。
彼女もまた、
身体的自由を失いながらも前向きな精神で
一生懸命生きた方でした。

改めて、健康な身体を持つこと、
生きることの素晴らしさとありがたさを感じることができた
素敵な作品でした。

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